母の厳しさは半端ではなかった。
今は虐待と言われるようになったが、正にそれそのものであり、辛かったし、自分の気持ちは言わなくなった。
何か言うと言い訳か口答えとなり、両頬をつねられる。
試験の結果が一点でも足りないと「後の一点どーした!?ちゃんと聞いていたの!?耳はここにあるのよ!」と、耳を両側に引っ張られる。痛かった。
叩かれた腕にはみみず腫れが出来て、赤白にくっきりついた手の跡は、なかなか消えず、学校で友達に聞かれたら、何と言おうかと心配したものだ。
怒りが頂点に達すると、玄関の土間に黙祷、うつらうつらを目撃すると、背中を叩かれる。
稽古の最中に片手で本を読みながら反対の手で片手練習、見つかったら外に立たされる。
裸足で立たされているのを、通りがかりの人がシロジロ見て行く。嫌だった…。
ある日、雨の中立っている私を見て、驚いた同級生のお母様が、タオルを何枚も持って母に抗議して下さった。
玄関を叩いて「何故、ここまでしなければいけないのか!」とその方が怒って仰ると、「私は教育してるんです!余計なお世話!帰って!」と言って玄関を閉めた母。
そのやり取りを今も覚えている。
その方は泣きながら、私の濡れて泥跳ねで汚れた足を拭いて下さった。 小さな私は感謝した。
今でも思い出すとその方に感謝する。